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機上の痴漢

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今回は、私が経験したかなり強烈な “痴漢” の話です。

ミラノから成田へ向かう機上での出来事。
私の場所は、足がある程度伸ばせるものの、前に壁がある窓際の席だった。シートは3人がけで窓際が私、真ん中がおじいさん、通路側がツアーコンダクターの日本女性。
このおじいさん、痩せていて、物静かで、寂しそうな眼をして、とにかく哀れな雰囲気を醸し出していた。おじいさんは席に着き、ゴソゴソと動き始めた。シートベルトの掛け方が分からなかったらしい。私は手を差し伸べ、ガチャっとシートベルトをかけてあげた。そしてニコっと微笑んだ。その後、離陸してからもおじいさんへのケアは続く。このおじいさん、テーブルの出し方も、背もたれの動かし方も、映画の見方も全く分からないようだった。いつもゴソゴソと動いていた。そのゴソゴソが私の心を動かした。私は年寄りに弱い。そう私はおじいさんを見るとついついお手伝いをしてしまう。お礼とともにおじいさんはか細い声でゆっくりと自分の人生を語り始めた。歳は73歳で、生まれも育ちも福島。家族は妻と娘二人。娘は嫁いで、今は妻と二人で生活している。この旅行夫婦で参加。海外旅行が唯一の楽しみだと。そんな話をフンフンと聞きながら30分ほどが過ぎた。それからしばらく経って食事も終わり、私は「さあっ」と寝る体制に入った。

どのくらい寝ただろうか、フッと気づくと、な、な、な、なんと!おじいさんの右手が私の足の間をまさぐっているではないか!ギョ!思わず私はビシっと手をはねのけた。「何をしているんですか!」おじいさんは、急に機敏になってスっと手を引っ込めた。逃げる時の運動神経はあるようだ。何を話してよいのやら・・・、私は眠ることに集中した。しばらく経つと、今度は耳元で「すみません、年甲斐もなく、あんなことしてしまって・・・。」ベトベトした、か弱い声で囁いて来た。ギョ〜!今度はホントに気持ち悪い!

私はすぐに席を立った。後部座席に座っているキャビンアテンダントに救いを求める。そうしたら、「え、お客様、あのおじい様の娘さんか、ご親戚の方ではないのですか?」っと彼女もビックリ!きっと誰でも驚くでしょう。か弱そうで、可哀想なおじいさんが、痴漢なのですから。すぐに彼女の上司がやって来て、「お客様、あちらでお話しましょう」っと、カーテンで仕切られた小さな部屋に通された。機上では、カーテンをただ閉めるだけで部屋になってしまう・・・魔法のようだと感心した。「お客様、どうしましょうか。この事件を訴えますか?それともこのままにしますか?」とのこと。

ここで訴えた場合、機上で事情聴取が行われ、着陸した段階で警察行きなのだそうだ。おじいさんもこのカーテン部屋に連れて来られるのだ。さあ、どうする?・・・。おじいさんは73歳。楽しみにしていた海外旅行、それにこの機上のどこかの席に奥さんがいる。警察行きとなったら大変だ。七十過ぎの長い夫婦生活、もう安泰だと思っていたのに、信じていた夫が機上で痴漢!私の一言で、この老人の人生が狂ってしまう。犯されたわけではない、右手が私の太ももを這っていただけじゃないか・・・と自分に言いきかせる。そして私は言った。「いいえ、今回は結構です。席だけ交換して頂けたら十分です。」するとアテンダント氏は、「でもお客様、女性の立場として、どんなにお年寄りでも訴えた方がよろしいのではないでしょうか、その男性はこの先も続けるかもしれませんよ!」っと。それでも「結構です」と断ると、「お客さまは本当に優しい方なのですね」と褒められてしまった。そうかぁ、私はそんなに優しいのかぁ・・・と自分で納得。

自分のことより、その老人夫婦のことを考えてしまった。もし自分の父親がそんなこをしたら・・・。もし人生ずっと添い続ける約束だった老夫婦に亀裂が入ったら・・・。何も盗まれたわけでもないし、手が動いてしまっただけ、ちょっとした気の迷いだったんだと思うことにした。

しかしである、あれから何年も経った。が、今でも耳元で囁かれたあの気持ち悪いベトベトした声が聞こえてくる。そして思う。「あのおじいさんは絶対、痴漢常習犯だ!」っと。一緒に奥さんと旅行していたと言っていた。普通、夫婦は隣の席になるのに、何故?やっぱりあのおじいさんは変だ。最初の30分のいたれりつくせりで、おじいさんに「この女性は何をしても許してくれるだろう」というイメージを与えてしまったのだろう。別に私がセクシーだったわけではない。私は機上では必ず、鞭うち症用の頑丈な首ギブスをはめている。セクシーなはずはない・・・と思う。よほど変な趣味がない限り、誰も首ギブスにはときめかないだろう。

なにはともあれ、あのか弱いおじいさんは今でも何処かで “痴漢業” を営んでいることだろう。男性にはいくつになっても気を緩めてはいけない!特に、か弱そうな男が危険かも。

でもそれからは、その航空会社に乗る時は広い席を取って貰えるようになった。この痴漢話をすると皆、驚き、申し訳ありませんと言ってくれる。私はあの席は “死角” なので危険だと思うと言うと、納得して広々とした席にしてくれるのだ。“右手の徘徊”のおかげでゆったりとした席に座れるようになり、快適な旅が出来るようになった。

おじいさんの家族に亀裂は入らず、そして私にも良いことがあった“機上痴漢”の物語。 福島のニュースを聞く度に、あのおじいさん、どうしているかしらと、妙に懐かしくなるお話でした。

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コメント 9

Victormama

鞭打ち症用のギブスにときめいていたとしたら、ちょっとあぶないおじいさんだなあ。まあ、73歳になっても元気なんて、そのおじいさんもなかなかだ。がんばれじいさん!ところで、奥さん、そのときどこにいらっしゃったのでしょうね?
by Victormama (2012-04-06 03:23) 

人生まっしぐら

Victormamaさん
そうなのです、私にも謎。普通夫婦でツアーに参加していたら隣の席になるでしょう? 不思議!
by 人生まっしぐら (2012-04-06 21:41) 

mek

おじいさん、事を急ぎましたねー。とりあえず手を握るくらいで止めておけばよかったのに。でもその後の彼の人生がバラ色になったと思うので、結果的には人助けになったのでは。

by mek (2012-04-07 19:48) 

人生まっしぐら

mekさん
そうですかねぇ~、バラ色になりましたかねぇ~
by 人生まっしぐら (2012-04-08 01:03) 

茉莉香

このお話聞いたとき、てっきりイタリア人のおじいさんかと思ってました・・・・日本人だったんですね・・・それにびっくり。

その方、いまどうしているのでしょうね。。。

by 茉莉香 (2012-04-08 10:04) 

人生まっしぐら

茉莉香さん

ほんとにおいいさん、今頃何しているのかしらね、、
by 人生まっしぐら (2012-04-08 13:22) 

カーラ

じいさんはほっとくことだな。
by カーラ (2012-04-12 06:15) 

カーラ

これからは、じいさんがいてもほっとくことですな。
by カーラ (2012-04-12 06:15) 

kazcop

気持悪いねぇ~
by kazcop (2012-04-15 23:02) 

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